相反抑制(Ⅰa抑制)は、リハビリテーションの現場でよく活用される生理学的な仕組みです。
筋肉がスムーズに働くための重要なメカニズムであり、動作学習や痙縮の緩和など、臨床で役立つ場面が多くあります。
この記事では、相反抑制の基本的な仕組みと、リハビリでの応用についてわかりやすく整理します。
相反抑制(Ⅰa抑制)とは?
相反抑制とは、主動筋が収縮するときに拮抗筋が自然に弛緩する現象のことです。
筋紡錘からの求心性線維である Ⅰa線維 が関わるため、「Ⅰa抑制」とも呼ばれます。
基本のメカニズム
主動筋が収縮するとき、拮抗筋は弛緩します。
具体的には、
主動筋が収縮→筋紡錘の興奮→主動筋に伸張反射を起こす,抑制性ニューロンを介して拮抗筋を抑制→関節の運動が生じる
という流れで動作が成立します。
膝蓋腱反射を例に説明するとイメージしやすいですね。
①腱が伸張、主動筋の筋紡錘が興奮
②GⅠa線維が中枢へ興奮を伝える
③脊髄内で主動筋のα運動神経に興奮を伝達、同時に拮抗筋の髄節で抑制ニューロンを介し拮抗筋のα運動神経を抑制
④主動筋は収縮、拮抗筋が弛緩
⑤関節運動

日常生活動作での相反抑制の例
相反抑制は、日常のあらゆる動作で自然に働いています。
- 歩行:前脛骨筋が働くと、ふくらはぎの筋が緩む
- 階段昇降:大腿四頭筋とハムストリングスが交互に働く
このように、筋肉同士が協調することでスムーズな動作が可能になります。
リハビリで注目される理由
相反抑制は、臨床で以下のような目的で活用されることがあります。
筋緊張の緩和
脳卒中後の痙縮などに対して、拮抗筋を収縮させることで、過剰な筋緊張を和らげる可能性があるとされています。
可動域の拡大
ストレッチの際に拮抗筋を意図的に収縮させることで、伸ばしたい筋がより伸びやすくなることがあります。
※ただし、病態や目的によって効果は異なり、エビデンスが十分でない点には注意が必要です。
動作の再教育
動作学習の場面では、筋の切り替えがスムーズになることで、歩行や上肢動作の改善につながる可能性があります。
実際のリハビリ応用例
相反抑制は、さまざまな臨床場面で応用されています。
脳卒中リハビリ
痙縮がみられる筋に対して、拮抗筋の収縮を促すことで、緊張の軽減に役立つ場合があります。
例:足関節背屈を促し、下腿三頭筋の過剰な緊張を抑えるなど。
スポーツリハビリ
ケガ後の筋バランス調整や柔軟性向上に活用されることがあります。
相反抑制を利用したストレッチは、再発予防にもつながる可能性があります。
高齢者の運動機能改善
筋の切り替えがスムーズになることで、歩行練習や階段昇降などの日常動作の学習をサポートできます。
まとめ
相反抑制は、筋と神経が協調して働くための重要な仕組みです。
- 主動筋が収縮すると拮抗筋が弛緩する
- 動作の円滑化に欠かせない生理学的メカニズム
- 臨床では痙縮の緩和、可動域改善、動作学習などに応用される
この基本を理解しておくことで、リハビリの見方や介入の幅が広がります。
参考文献
石澤光郎・富永淳 (2007) 『標準理学療法学・作業療法学 生理学 第3版』株式会社医学書院
隈元庸夫 (2023) 「他動的ストレッチングにおける技術を科学する」 『理学療法』 40(9),815-824.



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