膝関節の筋を動きから理解する|触診のコツと臨床で迷うポイント

臨床早見表

臨床で「膝関節の動きに関わる筋は?」と迷ったとき、動きから逆引きできるように整理しました。

単なる起始・停止の暗記ではなく、触診のコツと臨床で迷いやすいポイントをあわせてまとめています。

膝関節は屈伸だけでなく回旋運動も含む関節なので、評価やアプローチの引き出しとして活用してください。

膝関節の動きを支える筋(全体像)

膝関節は屈伸運動と回旋運動を行うらせん関節です。

関わる主な筋は以下の通りです。

  • 大腿四頭筋(大腿直筋・外側広筋・中間広筋・内側広筋)
  • ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)
  • 縫工筋・薄筋
  • 大腿筋膜張筋
  • 腓腹筋・膝窩筋・足底筋

膝関節に関与する筋の多くは股関節や足関節をまたぐ二関節筋であり、膝固有の筋は膝窩筋のみです。

そのため、膝単独ではなく股関節・足関節との連動を意識する必要があります。

以下、動き別に触診のコツとあわせて解説します。

【運動方向別】筋の働きと触診のポイント

屈曲

関与する筋:大腿二頭筋/半腱様筋・半膜様筋/腓腹筋(補助)/膝窩筋(補助)/縫工筋・薄筋(補助)

動きのイメージ:かかとをお尻に近づける動き。ハムストリングスは坐骨結節から大腿後面を走ります。

触診のコツ

  • 大腿二頭筋:大腿後面外側で触知。膝を曲げた状態で腓骨頭に向かう腱が特に分かりやすい。
  • 半腱様筋・半膜様筋:大腿後面内側で触知。うつ伏せで膝を曲げる動作でハムストリングス全体の収縮を確認しつつ、内側(半腱様筋・半膜様筋)と外側(大腿二頭筋)を分けて触れると差が分かりやすい。
  • 腓腹筋:膝窩部から下腿後面。膝を曲げながら足関節を底屈させる複合動作で強く収縮する二関節筋。
  • 膝窩筋:膝窩の最深部にあり直接触診はほぼ不可能。屈曲初期の下腿内旋(スクリューホームムーブメントの解除)に関与するとされる。

臨床で迷うポイント:ハムストリングス内側(半腱様筋・半膜様筋)と外側(大腿二頭筋)の筋力バランスが崩れると、屈曲時の下腿回旋アライメントに影響することがある。膝の内側・外側どちらの張りが強いかを確認すると評価の手がかりになる。

伸展

関与する筋:大腿四頭筋(大腿直筋・外側広筋・中間広筋・内側広筋)

動きのイメージ:膝を伸ばす動き。大腿直筋は股関節もまたぐ二関節筋です。

触診のコツ

  • 大腿直筋:大腿前面中央で触知。股関節伸展位・膝屈曲位で伸張されるため、短縮の有無は伏臥位での膝屈曲角度(エリーテストに準じた肢位)で確認しやすい。
  • 内側広筋(VMO):膝蓋骨内上方に触れる。膝伸展の最終域(残り10〜15度程度)で特に働くとされ、パテラセッティング(膝下にタオルを入れて押しつぶす運動)で促通しやすい部分。
  • 外側広筋:大腿外側で触知しやすい。
  • 中間広筋:大腿直筋の深層にあり直接触診は難しい。

臨床で迷うポイント:大腿直筋は股関節・膝関節の両方にまたがるため、同じ「骨盤前傾」でも原因が腸腰筋(股関節屈筋)由来なのか大腿直筋由来なのかで介入が変わる。膝を深く曲げたときに骨盤が浮き上がるようであれば大腿直筋の短縮を疑う、といった鑑別の視点が役立つ。

外旋

関与する筋:大腿二頭筋/大腿筋膜張筋(補助)

動きのイメージ:膝を曲げた状態でつま先を外側に向ける動き。

触診のコツ:大腿二頭筋の腱は、膝屈曲位でつま先を外側に向けると腓骨頭に向かって浮き上がるように触知できる。ハムストリングス内側の腱(後述)との触り分けの基準になる。

臨床で迷うポイント:外旋可動域自体は日常であまり単独評価されないが、大腿二頭筋の柔軟性はハムストリングス肉離れのリスク評価の一環として確認されることが多い。

内旋

関与する筋:半腱様筋・半膜様筋/縫工筋・薄筋

動きのイメージ:膝を曲げた状態でつま先を内側に向ける動き。

触診のコツ:半腱様筋・半膜様筋・縫工筋・薄筋は脛骨上部内側で「鵞足」と呼ばれる腱の集合部に停止する。膝屈曲位でつま先を内側に向けると、鵞足部の腱群がまとめて緊張するのを触知できる。

臨床で迷うポイント:鵞足部は複数の筋の腱が集中するため、痛みが出た際にどの筋由来かの特定が難しい(鵞足炎)。内旋動作での再現痛の有無や、各筋の起始側(坐骨結節・恥骨・上前腸骨棘)を個別に評価すると鑑別のヒントになる。

臨床での活用|担当ケースから

臨床でよく経験するのは、大腿直筋の短縮です。

大腿直筋は股関節と膝関節にまたがる2関節筋であるため、股関節屈曲だけでなく骨盤前傾にも影響します。

同じ骨盤前傾姿勢であっても、その原因が腸腰筋由来なのか、大腿直筋由来なのかで介入ポイントは大きく変わるため、両者の鑑別は非常に重要です。

また、膝関節伸展不全(エクステンションラグ)と内側広筋(VMO)の筋活動には強い関連があり、膝関節術後のリハビリテーションでは内側広筋の促通を積極的に行っています。

実際に担当した方でも、膝関節伸展不全があり、歩行時に膝折れが出現していたケースがありました。

膝関節伸展可動域の確保と、パテラセッティングによる内側広筋の促通を行うことでエクステンションラグが改善し、歩行時の膝折れも軽減しました。

膝関節の評価では、局所の筋力だけでなく、股関節・骨盤・足関節との協調性を含めて下肢全体を捉えることが重要だと感じています。

早見表(起始・停止・神経支配・作用)

現場でサッと確認したいときのために、参考として一覧をまとめておきます(詳細な触診・臨床のポイントは上記を参照してください)。※青色は補助的に働く

大腿二頭筋

起始長頭-坐骨結節
短頭-大腿骨粗線
停止腓骨頭,脛骨外側顆
神経長頭-脛骨神経L5-S2
短頭-腓骨神経L5-S1
作用膝関節屈曲,外旋

半腱様筋

起始坐骨結節
停止脛骨上部内側面(鵞足)
神経坐骨神経L(4),5,
S1,(2)
作用膝関節屈曲,内旋

半膜様筋

起始坐骨結節
停止脛骨内側顆,
斜膝窩靱帯
神経坐骨神経L4-S1
作用膝関節屈曲,内旋

大腿四頭筋

起始大腿直筋-下前腸骨棘,
     寛骨臼上縁
外側広筋-大腿骨
     大転子,
     大腿骨
     外側面
中間広筋-大腿骨前面,
     外側面
内側広筋-大腿骨
     内側面
停止膝蓋骨底,
および両側縁,
脛骨粗面
神経大腿神経L2-4
作用膝関節伸展

大腿筋膜張筋

起始上前腸骨棘
停止腸脛靭帯を経て
脛骨外側顆
神経上殿神経L4-S1
作用膝関節伸展(伸展位),
屈曲(屈曲位),外旋

縫工筋

起始上前腸骨棘
停止脛骨上部内側面(鵞足)
神経筋大腿神経L2-3
作用膝関節屈曲,内旋

薄筋

起始恥骨体,恥骨下枝
停止脛骨上部内側面(鵞足)
神経閉鎖神経L2-4
作用膝関節屈曲,内旋

腓腹筋

起始内側頭-大腿骨膝窩部,
    大腿骨
    内側上顆,
    膝関節包
外側頭-大腿骨
    外側上顆,
    関節包
停止ヒラメ筋腱と合し,
アキレス腱となり,
踵骨隆起につく
神経脛骨神経
L(4),5-S1,(2)
作用膝関節屈曲

膝窩筋

起始大腿骨外側上顆
停止脛骨上部後面
神経脛骨神経L4-S1
作用膝関節屈曲,内旋

足底筋

起始大腿骨膝窩面
停止アキレス腱に合流し
踵骨隆起
神経脛骨神経L4-S1
作用膝関節屈曲

まとめ

膝関節は屈伸運動と回旋運動を行うらせん関節であり、特に回旋運動は臨床で見落とされやすいポイントです。

屈曲初期には内旋が起こり、伸展に向かうにつれて外旋が強くなる「スクリューホームムーブメント」は、膝の安定性を理解するうえで欠かせません。

また、膝関節に関与する筋の多くは2関節筋であり、股関節や足関節との連動を考慮しなければ、正確な評価や治療につながりません。

膝関節固有の筋は膝窩筋のみであることも、臨床での鑑別に役立ちます。

筋の走行・作用・支配神経を理解しておくことは、代償パターンを見抜き、適切な介入ポイントを判断するための重要な基盤になります。

この記事が、膝関節の評価や治療方針を考える際の“機能解剖に立ち返るための確認ツール”として役立てば嬉しいです。

※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状に不安がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

・中村隆一・齋藤宏・長崎浩 (2009) 『基礎運動学 第6版』 医歯薬出版株式会社
・青木隆明監修・林典雄 (2010) 『運動療法のための機能解剖学的触診技術-下肢・体幹 第1版』株式会社メジカルビュー社

理学パパ

パパ歴(8年目)

保有資格
・理学療法士(14年目)
・登録理学療法士
・呼吸認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・福祉住環境コーディネーター2級
・ICLS

理学パパをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました