日常生活動作(ADL)の評価でよく使われる Barthel Index(バーセルインデックス)。
「見守りは何点?」「装具を使ったら減点?」など、現場では迷いやすいポイントが多い評価でもあります。
この記事では、原著(Mahoney & Barthel 1965、Collin 1988)に基づく正しい採点基準を、現場で迷わないレベルまでわかりやすく整理します。
この記事でわかること
- Barthel Indexの正しい採点基準
- 「見守り」が自立か介助かの判断
- 装具・歩行器の扱い
- 10項目それぞれの迷いやすいポイント
- BIを現場でブレずに使うための基準
Barthel Indexとは?まず押さえておきたい基本
Barthel Index(BI)は、食事・移乗・歩行・排泄など10項目のADLを0〜100点で評価する指標です。
BIの特徴
- “できるADL(Capacity)”=能力ベースの評価
- 0〜5点/0〜10点/0〜15点の 粗い段階評価
- 認知項目は含まれない(FIMとの大きな違い)
- 短時間で評価でき、病院〜在宅〜施設まで幅広く使われる
評価方法
- 観察または聞き取り
- 原則は「能力」を評価するが、日本では生活実態(Performance)として使われることも多い
BIとFIMの違いは別の記事でまとめています。
BIにおける「見守り」は自立?介助?
結論から言うと、原著の定義では「見守り=自立(満点)」が基本です。
原著の定義
Mahoney & Barthel(1965)では、
- Independent(自立)=身体介助が不要
- Help(介助)=身体介助が必要
と明確に書かれています。
つまり、
- 身体に触れていない
- 動作が本人だけで成立している
この2つが満たされれば 見守りがあっても「自立」扱い です。
どんな見守りが「介助」になるのか?
以下のような場合は 実質的に介助(help) と判断されます。
- 声かけがないと動作が成立しない
- 誘導が必要
- 触れる可能性が高い(転倒リスクが高い)
- 手順を指示しないと進めない
- バランス保持のために手を添える必要がある
ポイント
“安全確認のための見守り” は自立 “動作成立のための見守り” は介助
この区別が最も重要です。
【全10項目】Barthel Indexの採点基準をわかりやすく解説
以下は原著に基づく採点基準を、現場で迷わないように整理したものです。
食事
ポイント:食事動作の“全体”が自立しているかどうか。
自立(10点)
- 配膳後は自分で食べきれる
- 自助具の使用OK(自分で装着できる場合)
部分介助(5点)
- 食べ物を切るなどの準備が必要
- 食器操作の補助が必要
- 動作成立のための声かけ・見守りはここ
全介助(0点)
- スプーンを口に運べない
- ほぼ全て介助が必要
迷いやすいポイント
- 「見守り=5点?」と誤解されやすい → 動作が成立していれば10点
- 食事の“準備”は採点に含めない
- 切る・刻むなどの補助が必要なら5点
- 自助具はOKだが、自分で装着できるかが重要
移乗
ベッド⇄椅子の移乗動作を評価。
自立(15点)
- 車椅子操作〜ベッド移動まで全て自力で安全に実施
軽度介助・見守り(10点)
- 基本は自分でできるが、一部で声かけ・軽介助が必要
- 見守りが“動作成立のため”ならここ
座位保持のみ(5点)
- 座ることはできるが、移乗はほぼ介助
全介助(0点)
迷いやすいポイント
- 歩行器のブレーキ操作やフットレスト操作が自力かどうか
- 見守りが「安全確認」か「動作成立のため」かで点数が変わる
- 装具の着脱が自力でできないと減点
- “座位保持のみ”と“軽介助”の境界が曖昧になりやすい
整容
洗顔・歯磨き・髭剃りなど。
自立(5点)
- 洗顔・歯磨き・整髪・髭剃りなどを自力で実施
全介助(0点)
ポイント
- 道具の準備(歯ブラシを出す等)は採点に含めない
- 髭剃り・洗顔・歯磨きの“どれか一つ”ではなく、一連の整容動作ができるか
- 立位保持が不安定でも、座位でできれば自立扱い
トイレ動作
自立(10点)
- トイレへの移動、衣服操作、後始末まで自力
部分介助(5点)
- バランス保持や衣服操作に介助が必要
- 動作成立のための声かけ・見守りが必要ならここ
全介助(0点)
迷いやすいポイント
- 衣服操作が自力かどうかで点数が大きく変わる
- ポータブルトイレ使用時は「洗浄まで」含む
- 見守りが“安全確認”なら10点、“動作成立のため”なら5点
- 便座移乗の安定性をどう判断するかで迷いやすい
入浴
自立(5点)
- 浴槽に入る、シャワーを使う、洗身が自力で可能
- 手すり使用はOK
全介助(0点)
ポイント
- 0点か5点しかないため、判断が極端になりがち
- 原著は「bathing(洗身)」の能力を評価
- 浴槽出入りは必須ではない
- シャワー浴のみでも洗身が自立なら5点
歩行・移動
自立(15点)
- 45m以上を安全に歩行
- 杖・義足・装具の使用OK
- 歩行器は不可(使用すると10点扱い)
介助歩行(10点)
- 45m以上歩けるが、見守り・軽介助が必要
- 歩行器使用もここに含まれる
車椅子自立(5点)
- 歩行は不可だが、車椅子で45m以上自走可能
全介助(0点)
迷いやすいポイント
- 歩行器は自立扱いではない(10点)
- 杖・義足・装具はOK
- 45mの距離をどう確保するか(廊下の長さ問題)
- 見守りが必要な場合は10点
- 車椅子自走は“歩行”ではなく5点扱い
階段昇降
自立(10点)
- 手すり使用OK
- 安全に昇降できる
介助・監視(5点)
- 見守り・声かけが必要
全介助(0点)
迷いやすいポイント
- 手すり使用はOK
- 「見守り=5点」だが、安全確認か動作成立かで迷いやすい
- 階段が施設にない場合の扱い(聞き取りでOK)
- 一段だけ昇降できても“階段昇降”とは言えない
更衣
自立(10点)
- 上下衣・靴・装具の着脱まで自力
- 時間がかかっても自力でできれば10点
部分介助(5点)
- 半分以上は自分でできる
全介助(0点)
迷いやすいポイント
- 上下衣・靴・装具の着脱がすべて自力かどうか
- 時間がかかってもOK(能力評価)
- コルセット・装具の着脱が自力でできるか
- ボタン・ファスナーの操作ができるかどうか
排便コントロール
自立(10点)
- 失禁なし
- 坐薬・浣腸の自己管理が可能
部分介助(5点)
- 坐薬・浣腸の介助が必要
- 時々失禁あり
全介助(0点)
迷いやすいポイント
- パッド使用でも“自分で管理できれば”10点
- 坐薬・浣腸の自己管理ができるか
- 「時々失禁」の頻度判断が曖昧になりやすい
- 便意の訴えができない場合は5点以下
排尿コントロール
自立(10点)
- 失禁なし
- 収尿器の管理が自力で可能
部分介助(5点)
- 時々失禁
- 収尿器の着脱に介助が必要
全介助(0点)
迷いやすいポイント
- 収尿器の管理が自力かどうか
- 尿意の訴えができない場合は減点
- パッド使用でも自分で交換できれば10点
- 「時々失禁」の基準が施設でブレやすい
Barthel Indexの点数と自立度の目安
| 合計点 | 自立度の目安 |
|---|---|
| 80〜100点 | ほぼ自立、在宅生活が可能 |
| 60〜79点 | 軽度の介助が必要 |
| 40〜59点 | 中等度の介助が必要 |
| 20〜39点 | かなりの介助が必要 |
| 0〜19点 | ほぼ全介助 |
※点数はあくまで目安。生活環境や本人の希望と合わせて判断することが重要。
まとめ:Barthel Indexは“生活を見る”ためのツール
- BIは 能力(Capacity) を評価する指標
- 見守りは基本「自立」扱い
- ただし、動作成立に必要な見守りは「介助」
- 装具使用は基本OK(歩行器のみ注意)
- 原著の定義を理解すると、現場で迷わない
BIを正しく使うことで、 スタッフ間の評価のズレが減り、ケアの質が大きく向上します。
参考文献
Mahoney FI, Barthel DW. Functional evaluation: the Barthel Index. Md State Med J. 1965.
Collin C, Wade DT, et al. The Barthel ADL Index: a reliability study. Int Disabil Stud. 1988.
産業医科大学リハビリテーション医学講座:Barthel Index評価基準



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