肘関節に関わる筋を整理してみた|起始・停止・神経・作用まとめ

理学療法士の学び

臨床で“肘関節の動きに関わる筋は”と思ったとき、すぐに確認できるようにまとめました。

肘関節は屈曲・伸展だけでなく、前腕の回内外とも密接に関係しており、筋の協調性が崩れると代償が生じやすい関節です。

特に肘はスポーツの中で負荷が集中しやすく、機能解剖を正確に把握しておくことが臨床では非常に重要です。

この記事では、肘関節の動きに関与する筋を整理し、評価・治療の精度を高めるための知識をまとめています。

肘関節まわりの筋(起始・停止・神経・作用)

筋の一覧 ※青色は補助筋

上腕二頭筋

起始長頭-肩甲骨
   関節上結節
短頭-肩甲骨烏口突起
停止橈骨粗面,前腕筋膜
尺骨(上腕二頭筋腱膜
を経て)
神経筋皮神経C5-6
作用肘関節屈曲,
前腕回外

上腕筋

起始上腕骨前面
停止尺骨粗面
神経筋皮神経C5-6
作用肘関節屈曲

上腕三頭筋

起始長 頭-肩甲骨関節
    下結節
外側頭-上腕骨後面
内側頭-上腕骨後面
    橈骨神経溝
    より下方
停止肘頭
神経橈骨神経C6-8
作用肘関節伸展

肘筋

起始上腕骨外側上顆後面
停止肘頭,尺骨後面
神経橈骨神経C7-8
作用肘関節伸展,
前腕回内

腕橈骨筋

起始上腕骨外側縁,
外側上腕筋間中隔
停止橈骨茎状突起
神経内側・橈骨神経C(5)
6~7,(8)
作用肘関節屈曲,
前腕回内,回外

円回内筋

起始上腕頭-上腕骨内側
    上顆
尺骨頭-尺骨鉤状突起
停止橈骨外側面
神経正中神経C6-7
作用前腕回内,
肘関節屈曲

方形回内筋

起始尺骨粗面の遠位部
停止橈骨前面の遠位部
神経正中神経C6-T1
作用前腕回内

回外筋

起始上腕骨外側上顆,
肘関節の靱帯
停止橈骨前面の近位部
神経橈骨神経C(5),
6-7,(8)
作用前腕回外

運動方向別に働く筋 ※青色は補助筋

肘関節の屈曲に関与する筋

  • 上腕二頭筋
  • 上腕筋
  • 腕橈骨筋
  • 円回内筋
  • 手関節屈筋群

肘関節の伸展に関与する筋

  • 上腕三頭筋
  • 肘筋
  • 手関節伸筋群

前腕の回内に関与する筋

  • 円回内筋
  • 方形回内筋
  • 腕橈骨筋
  • 肘筋
  • 手関節屈筋群

前腕の回外に関与する筋

  • 回外筋
  • 上腕二頭筋
  • 腕橈骨筋
  • 長母指外転筋

臨床での活用

ここからは、実際の臨床で筋の働きや可動域の違いがどのように症状へ影響するのか、私が担当した症例をもとに紹介します。

投球動作において、肘内側の痛み(上腕骨内側上顆部痛)を訴える方を担当したことがあります。

この方は、肘そのものの筋力や安定性には大きな問題が見られなかった一方で、肩関節の3rd内旋(水平外転位での内旋)に明らかな可動域制限がありました。

投球のリリース期では、肩は急激に内旋し、肘は回内方向へ動きます。

この肩内旋が十分に出ないと、代償として肘の回内や外反ストレスが増大し、結果として内側側副靱帯(UCL)や屈筋群付着部に牽引ストレスが集中しやすくなります。

実際にこの症例でも、肩の3rd内旋制限が強い状態で投球を繰り返していたため、リリース時に肘内側へ過剰な負荷がかかり、痛みにつながっていたと考えられました。

肩の内旋可動域を改善し、投球フォームでの代償を減らすよう介入したところ、肘内側の痛みは軽減し、投球時の安定性も向上しました。

肘の痛みであっても、原因が肩の可動域や協調性にあるケースは少なくありません。
局所だけでなく、投球動作全体の連動性を評価することが重要だと感じた症例でした。

まとめ

肘関節は一見シンプルな屈伸運動に見えますが、実際には上腕骨・橈骨・尺骨の三つの関節が連動して働く複関節であり、前腕の回内・回外とも密接に関係しています。

そのため、どの筋がどの局面で働いているのかを正確に把握することが、評価・治療の精度を大きく左右します。

特にスポーツ動作では、肩・肘・前腕の協調性がわずかに崩れるだけで外反ストレスや牽引ストレスが増大し、内側上顆部痛やUCLストレスにつながりやすくなります。

筋の走行・作用・支配神経を理解しておくことは、こうした代償パターンを見抜き、適切な介入ポイントを見極めるための基盤になります。

この記事が、肘関節の評価や治療方針を考える際の“機能解剖に立ち返るための確認ツール”として役立てば嬉しいです。

参考文献

中村隆一・齋藤宏・長崎浩 (2009) 『基礎運動学 第6版』 医歯薬出版株式会社
青木隆明監修・林典雄 (2010) 『運動療法のための機能解剖学的触診技術-上肢 第1版』株式会社メジカルビュー社

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