理学療法評価って、最初の頃はとにかく「何から見ればいいの?」と迷いますよね。
ROM、MMT、歩行、ADL…どれも大事に見えるし、時間も足りない。
でも実は、評価は“全部を完璧にやること”ではありません。
問題点を素早く見抜くための思考プロセスを持つこと。
これこそが、臨床で本当に求められる力です。
この記事では、ガイドラインや標準評価の考え方を踏まえながら、新人でも迷わず問題点を抽出できる「最速のコツ」をわかりやすく紹介します。
評価のゴールは「問題点を絞ること」
理学療法ガイドライン第2版では、理学療法は「エビデンスに基づき、対象者の機能・活動・参加を改善するための介入」と定義されています。
つまり、評価の目的は 「治療につながる情報を見つけること」。
数値を集めること自体が目的ではありません。
新人がやりがちな3つの失敗
- 評価項目を“全部”やろうとする
- 数値を集めることが目的になってしまう
- 問題点が多すぎて整理できない
私自身も新人のころ、まさにこの状態でした。
MMTやROMの数値をひたすら集めることに必死で、カルテにはきれいな数字が並んでいるのに、先輩から
「で、何が問題なの?」
と聞かれると固まってしまったことがあります。
“評価=測ること”だと思い込んでいた私は、数値が揃っているのに動作のどこが困っているのか説明できない。
あのとき初めて、「評価は測定ではなく、原因を考えるプロセスなんだ」と痛感しました。
この経験があったからこそ、私は“仮説を立ててから評価する”という考え方の重要性に気づきました。
最速で問題点を見抜く3ステップ
まず“生活上の困りごと”を押さえる
理学療法標準評価でも、基本動作能力や生活機能が重視されています。
最初に見るべきは、ROMでもMMTでもなく 生活のどこで困っているか。
例:
- 起き上がりや立ち上がり
- 歩行
- トイレ
- 階段
- 家事 etc…
ここを押さえるだけで、評価の方向性が一気に絞れます。
私は特に、動作の「実用性」に着目して、どの要素が自立を妨げているのかを考えるようにしています。
動作の“実用性”から問題点を絞る
実用性は以下の5つで構成されます。
- 安全性
- 安定性
- 持久性
- スピード
- 社会的容認性
対象者や環境によって求められる能力は異なります。
課題となる動作において、どの実用性が不足しているのか、そしてその原因は何かという視点で評価すると、問題点が明確になります。
“原因の仮説”を立ててから評価する
ガイドラインでは、理学療法は仮説検証型で進めることが推奨されています。
つまり、評価は
「仮説 → 検証」
の流れで行うと迷いません。
例:立ち上がりが遅い
- 下肢筋力?
- 股関節の可動域?
- 体幹のコントロール?
- 痛み?
仮説を立ててから必要な項目だけ評価することで、“全部やらなきゃ”という焦りが消えます。
評価結果は“1つのストーリー”にまとめる
新人がつまずきやすいのが、評価した情報をどう整理するか。
ここで意識したいのは、
原因 → 結果 → 生活の困りごと
というストーリーを作ること。
例:
- 股関節屈曲の可動域制限(原因)
- 立ち上がり時の前方移動が不十分(結果)
- 立ち上がりが遅い(生活の困りごと)
この流れが作れると、治療方針も自然と決まります。
もし辻褄が合わない場合は、別の要因が隠れているサイン。
高齢者の複合疾患では、1回の評価で的を得るのは難しいことも多いです。
その場合は、疾患別評価などボトムアップの視点も活用します。
新人が見落としがちな3つの問題点
痛みの影響を過小評価する
痛みは機能障害の大きな要因です。
痛みがあると筋力も動作も正しく評価できません。
生活環境を見ない
地域理学療法ガイドラインでは、環境要因の重要性が強調されています。
- 家の段差
- トイレの高さ
- 手すりの有無
- 和式か洋式か
- 個人宅か集合住宅か
環境は問題点の大きなヒントになります。
“できる”と“している”を混同する
標準評価でも、能力と実行状況は分けて考えることが推奨されています。
病院ではできても家ではできない、家ではできても病院ではできない、こうしたギャップは非常に多いです。
新人でも迷わない評価の優先順位リスト
- 生活の困りごと(最優先)
- 原因の仮説を立てる
- 仮説に必要な項目だけ評価する
- ストーリーとして整理する
- 治療につなげる
この流れを守るだけで、評価が一気にシンプルになります。
まとめ:評価は“全部やる”より“考えて絞る”が効率的
新人の頃は、評価項目を網羅しようとして迷いがちです。
でもガイドラインや標準評価が示しているのは、「生活に直結する問題点を見抜き、仮説検証で評価する」
というシンプルな考え方。
- 生活の困りごとを押さえる
- 仮説を立てて必要な項目だけ評価する
- 原因と結果をストーリーでつなぐ
この3つを意識すれば、評価は驚くほどスムーズになります。
新人のうちは迷って当たり前。
私自身、10年以上の臨床経験があっても迷うことは日常茶飯事です。
でも、考え方の“型”さえ身につけば、評価はどんどん楽しくなる。
そして完璧な正解はありません。
ああでもない、こうでもない、もっと良い方法はないか。
そう考え続ける姿勢こそが、対象者に対する誠実な対応だと思います。
参考文献
公益社団法人日本理学療法士協会(2021) 『理学療法ガイドライン第2版』



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