臨床で“肩甲骨の動きに関わる筋は”と思ったとき、すぐに確認できるようにまとめました。
肩甲骨まわりの筋(起始・停止・神経・作用)
筋の一覧
鎖骨下筋
| 起始 | 第1肋骨とその軟骨部 |
| 停止 | 鎖骨の下面 |
| 神経 | 鎖骨下筋神経C5~6 |
| 作用 | 上肢帯(肩甲骨)下制 |
小胸筋
| 起始 | 第3~5肋骨 |
| 停止 | 肩甲骨烏口突起 |
| 神経 | 内側・外側胸筋神経C7~T1 |
| 作用 | 上肢帯(肩甲骨)下制、外転、下方回旋 |
前鋸筋
| 起始 | 第1~9肋骨 |
| 停止 | 肩甲骨内側縁 |
| 神経 | 長胸神経C5~7 |
| 作用 | 上肢帯(肩甲骨)外転、上方回旋 |
僧帽筋
| 起始 | 外後頭隆起、項靱帯、 第7頸椎および第1~12胸椎の棘突起 |
| 停止 | 鎖骨、肩峰、肩甲棘 |
| 神経 | 副神経,頸神経C2~4 |
| 作用 | 上部-上肢帯(肩甲骨)挙上、上方回旋、内転 中部-上肢帯(肩甲骨)内転 下部-上肢帯(肩甲骨)下制、上方回旋、内転 |
肩甲挙筋
| 起始 | 第1~4頸椎の横突起結節 |
| 停止 | 肩甲骨上角、内側縁 |
| 神経 | 肩甲背神経、頸神経C2~5 |
| 作用 | 上肢帯(肩甲骨)挙上、下方回旋 |
大菱形筋
| 起始 | 第1~4胸椎の棘突起 |
| 停止 | 肩甲骨内側縁 |
| 神経 | 肩甲背神経C(4)、5、(6) |
| 作用 | 上肢帯(肩甲骨)挙上、内転、下方回旋 |
小菱形筋
| 起始 | 第6~7頸椎の棘突起、項靱帯下部 |
| 停止 | 肩甲骨内側縁 |
| 神経 | 肩甲背神経C(4)、5、(6) |
| 作用 | 上肢帯(肩甲骨)挙上、内転、下方回旋 |
運動方向別に働く筋
肩甲骨の挙上に関与する筋
– 僧帽筋(上部)
– 肩甲挙筋
– 大菱形筋
– 小菱形筋
肩甲骨の下制に関与する筋
– 鎖骨下筋
– 小胸筋
– 僧帽筋(下部)
肩甲骨の外転に関与する筋
– 小胸筋
– 前鋸筋
肩甲骨の内転に関与する筋
– 僧帽筋(中部)
– 大菱形筋
– 小菱形筋
– 僧帽筋(上部)
– 僧帽筋(下部)
肩甲骨の上方回旋に関与する筋
– 前鋸筋
– 僧帽筋(上部)
– 僧帽筋(下部)
肩甲骨の下方回旋に関与する筋
– 小胸筋
– 大菱形筋
– 小菱形筋
– 肩甲挙筋
まとめ
筋の走行や運動方向を正しく把握することは、評価・治療の質を高めるうえで不可欠です。
上肢帯は肩甲骨と鎖骨で構成され、肩甲帯とも呼ばれる肩関節まわりの総称です。
体幹と直接つながっている関節は胸鎖関節のみであり、肩甲骨は肋骨上を滑走するように動きます。
そのため、上肢帯の安定性は靱帯や筋肉によって支えられており、筋機能の影響を受けやすい構造といえます。
肩甲骨の動きは肩関節の機能にも密接に関係しており、肩甲骨の安定性が肩関節の可動性を支える土台となります。
本記事では、肩甲骨の動きに関与する筋を整理し、臨床での確認・応用に役立つよう構成しました。
筋の理解は、肩甲骨の可動性・安定性・協調性を評価するうえで重要な手がかりとなります。
臨床の現場で迷ったとき、この記事が“ちょっとした確認”の助けになれば嬉しいです。

コメント